三遊亭 司の「日日是遊有」

第三回目「江戸のお花見ガイド 飛鳥山」

「花見ィ行ったンだが、もうすごい人でね、まるで芋を洗うよう、俺ァこりちゃった」
「で、花ァどうだったぃ?」
「花?はな?はなぁ…あったかなぁ」

桜並木どんなに時代がかわろうが、ヒトの造りってもんに大差ない。
花の下。人、ひと、ヒトの顔いろは、花も顔負けのさくら色。
あとひと月もすれば、上野のお山も賑わうことだろう。
その上野のお山。いまもむかしも桜の名所に違いはないのだが、寛永寺を中心とし、幕府の管轄だったこのお山、花見時分には庶民にも開放されたものの飲酒飲食はもとより歌舞音曲はNG。

それにかわった江戸の桜の名所が向島であり、御殿山であり、飛鳥山。

それらが桜の名所てよばれるようになったのは、八代将軍吉宗が江戸各地に花樹を植え、健全な娯楽、遊園地の設置に取り組んだのがはじまり。
徳川吉宗。あの松平健に似た、暴れん坊の将軍サマ。

お弁当江戸から二里?8キロ。
入谷にすら、商家の別荘が立ち並んでた時代の王子は郊外も郊外。

近くには名所・王子七滝があり滝野川が流れ、風光明媚な渓谷美がたのしめるうえ、飲めや歌えもOK。
『長屋の花見』ではないけれど、焼飯、つくしの佃煮、よめななどの弁当、酒肴を持ち寄り江戸の郊外へ一日がかりのお花見。想像しただけでもわくわくする。

京浜東北線王子駅から見える、こんもりとした森が『飛鳥山』

あすかパークレール真ん中を都内唯一の路面電車『都営荒川線』が通る、この王子稲荷の一帯が飛鳥山と呼ばれたのであろう。
ゆるやかな登り道があるが、駅前にはモノレール『あすかパークレール』があり、時代の変化を感じさせてくれるが、いつの時代も江戸っ子は新しいモノ好きである。
16人乗りの無人のモノレールが48メートル、高低差17.4メートルをわずか二分でゆるゆるあがると山頂。
山頂部にはご丁寧に「標高 二十五・四米」とある。
歌川広重『名所江戸百景』を見ると、このモノレールをあがったあたりから日光連山、筑波嶺が見渡せるのだが、いまは多分に漏れずビルばかり。
しかしながら、吉宗がここを遊園地に定め、日光東照宮参拝の折の休憩地にしたように山上は広大。

飛鳥山山頂「梅は咲いたか 桜はまだかいな」

と、開花までまだ間もあるが、この樹々を見るだけでも花見時分の賑わいが目に見えるようだし、花見小袖という着物を幕のかわりに吊り、おのおの芸を見せあった江戸時代のその囃子声が聞こえてくるようだ。
飛鳥山がいまにいたる桜の名所となるまでに、徳川吉宗自ら宴席を設け、名所としてピーアルしたというから畏れいる。

 

八代将軍は白馬にのった暴れん坊ばかりでなく、観光都市の先駆け、江戸のトップセールスマンでもあったのだ。

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カテゴリ三遊亭司の「日日是遊有」 | 2012. 03. 02. 13:46 |
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