涼を求めて

水音と水の透明感が、涼で包みこむ。  -〔八月〕西多摩郡奥多摩町

JR青梅線「奥多摩」駅 JR青梅線「奥多摩」駅に降り立つと頬に当たる風も涼しさを増す。緑豊かな景色に溶けこむ木造の駅舎を出て右手に歩くとすぐ「ます釣場」の案内板が見え、日原川のせせらぎが耳に注ぎ込まれたかと思えば、瞬く間に渓流の風景の一つになる。

 リズミカルな川の水の囁きは、体まで清めるかのように清々しく、橋の上から川を眺めるとき、河原に下りて水の冷たさを指先に感じるとき、あるいは川沿いの散策コースを歩くときと、川面からの距離によって違う水音の変化がまた耳に心地よく涼やかだ。そこに蝉の声がハーモニーを仕掛ければ、夏の興趣はより一層盛り上がる。岩々を滑るように流れる透明な水流はさまざまに表情を変え、生き物のようなその動きは、ただ眺めるだけで飽きない。

 河原にできた水溜りでは、水しぶきを浴びながら子供たちが遊び、その横で思い思いの姿で釣り糸をたれる人々が楽しげだ。セメント工場に石灰石を運ぶトロッコは、時折動く姿が見られ胸の奥に生まれる郷愁を緑濃き山々がより一層かきたてる。

 

天然の冷気に体ごと包まれて

 

川沿いに整備された木陰の道 付近にはトレッキングに誘うコースも多いが、初心者は川沿いに整備された木陰の道を、川音を聞き山花の美しさを眺めながら歩くだけで森林浴気分が満喫でき、天然の涼の演出を存分に体感できる。

 奥多摩駅前交差点から約20分、愛車かバスで山を縫うように進めば、「日原鍾乳洞」の神秘が迎えてくれる。年間を通じて11度Cという洞内は、厳かな雰囲気と冷気に包まれ、水の滴りが奏でる水琴窟の音は、悠久のときを感じさせる神々しさを耳に届ける。つららのように下がる鍾乳洞独特の石の造形は別世界の景色を視界に満たし、肌寒ささえ感じる空気はこの季節には贅沢と言うほかない。東京の最北西、奥多摩の清流と緑と神秘の世界は、涼感という言葉を体のすみずみに感じさせてくれる。

 

蕎麦すする 音せせらぎに 似てる夏

東京の最北西、奥多摩の清流と緑と神秘の世界

 

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        カテゴリ今月の特集 | 2011. 08. 01. 09:00 |